全国大会を狙う関東の強豪チームが集い、1年を占う年初恒例の大会。第12回フィールドフォースカップは2月15日、埼玉県三郷市の半田公園野球場で最終日を迎え、レッドサンズ(東京)の9年ぶり2回目の優勝で閉幕した。連覇を期した豊上ジュニアーズ(千葉)との決勝は、初回のリードを守り抜いて2対1で勝利。走攻守でVに貢献した園田咲生中堅手が大会MVPに。また、敗者復活トーナメントは翌週22日に決勝があり、吉川ウイングスが同じ埼玉県の盟友、熊谷グリーンタウンに2対1で勝利。これをもって、1都3県22チーム参加による大会の全日程が終了した。
(写真=大久保克哉、鈴木秀樹)
※学年未表記は新6年生


■決勝
2月15日◇半田公園野球場C面
レッドサンズ(文京)
200000=2
001000=1
豊上ジュニアーズ(柏)
【レ】大塚、武内-武内、大塚
【豊】加藤、石井-関澤
二塁打/武内2(レ)、関澤(豊)
【評】レッドは初回、先頭の神谷駿が中前打、二番・武内瑛汰が右中間二塁打。そして野村咲翔のスクイズで先制、四番・川口大智(新5年)の投ゴロで2点目を加えた。追う豊上はその裏、二番・玉井蒼祐の安打と関澤月陸の右中間二塁打で同点の好機も、まずい走塁もあって無得点に終わる。その後も走者は出すものの、大塚結心から武内とつないだレッドの投手陣が粘投。豊上も守りで2併殺を決め、二番手の石井尊が後半戦を無失点でしのいだ。しかし得点は3回、後山晴の四球と二盗から玉井の中前タイムリーによる1点にとどまり、逃げ切ったレッドが9年ぶりに王座へ返り咲いた。

レッドがいきなりの好機。神谷の先頭打者安打㊤に、続く武内が右中間二塁打㊦

1回表、レッドは無死二、三塁から野村のスクイズ㊤と川口(新5年)の投ゴロ㊦で2点を先取

1回裏、豊上も玉井の左前打㊤と関澤の右中間二塁打㊦で一死二、三塁とするが…

3回裏、豊上は二番・玉井の中前打で二走・後山晴が生還㊤も、レッドは8-2-6の転送で打者走者を二塁タッチアウトに㊦

豊上は石井尊㊤、レッドは武内㊦。双方の二番手の粘投で最後まで緊張が保たれた

―Team Inside Story➊―
インフル蔓延も、粘りの勝利。門田監督「学び多い2試合」
(取材&文=鈴木秀樹)
優勝
=9年ぶり2回目
レッドサンズ
[東京・文京区]
レッドサンズはこの日、インフルエンザにより主力メンバー数人を含む7人が欠場し、新6年生は9人。急遽、新5年生も加え、新人戦とはガラリと変わった選手構成で、最終日の2試合に臨んだ。
山野ガッツ(埼玉)と戦った準決勝は、初回に山野の主砲・吉岡泰平に浴びた両翼70mの特設フェンス越え本塁打による2点を追いかける展開。2回にいったんは追いついたものの、4回に再び勝ち越しを許した。

それでも、絶体絶命の最終6回裏に相手バッテリーエラーで追いつくと、「後攻でもあったし、タイブレークになったら勝てると思っていました」という伊藤維主将の言葉どおり、延長タイブレーク7回、山野の攻撃をゼロで抑え、その裏、一死満塁からの押し出し死球でサヨナラ勝ちを収めたのだった(=㊤写真)。
この激戦勝利の代償もあった。門田憲治監督が振り返る。
「投手陣の中で、今のところ一番、調子が良いのは大塚結心(=㊦写真)。うまくいけば、準決勝では彼を温存、決勝に取っておいて…という考えもあったのですが、相手は山野さん。計算どおりに試合を運べるわけもなく、むしろ劣勢になってしまい…。当然、大塚を準決勝でも使わざるを得ず、32球投げさせる結果になってしまったんです」
その結果、決勝も当初のプランとは違うシナリオでの投手起用に。それでも、その決勝も大塚から武内へとマウンドをつなぎ、見事に豊上打線の猛追を防いでみせた。
「決勝開始時点で、大塚は(投球制限の70球まで)残り38球。2回までの登板となりましたが、うまく試合をつくってくれました。リリーフの武内もよく頑張ってくれた」


野手陣も堅実な守備で、奮闘の投手陣をもり立てた。大会MVPに選ばれたのは、中堅を守った園田咲生(=㊤写真)。門田監督は「普段はスタメンでないことも多い選手なんですが、今日は彼が素晴らしい守備でチームを救ってくれました」と、ディフェンス面での活躍を挙げた後、「バッティングでも、準決勝で最終回、同点に追いつきタイブレークに持ち込めたのは、彼のヒットからでしたしね」と感謝した。
園田本人も「今日はセンターの守備も、良い感じで素早く落下点に入って捕ることができたし、準決勝では(同点につながる)ヒットも打てました。MVPをもらえるとは思っていなかったけど、すごくうれしいです!」と喜んだ。

ほかにも、期待に応えた選手たちがいた。準決勝で四番を任された生井咲汰、2試合ともにフル出場した川口大智(=㊤写真)の新5年生コンビだ。生井は準決勝で、川口は決勝で、それぞれ初回に打点を記録するなど、きっちりと大役を果たしてみせた。
新人戦から活躍を続ける主力メンバーも、安定感のあるプレーでチームをけん引した。準決勝は先発登板し好投、決勝では三塁を守り好守備を連発し、ピンチを未然に防ぐ活躍を見せた神谷駿(=㊦写真左)は「サードの守備ではうまく守れたと思います。低学年のころから、ピッチャー以外ではサードを守っていたので」と涼しい顔で振り返る。
神谷は先頭打者としても、決勝では打線に勢いをつけ、自ら先制のホームを踏むなど2安打の活躍。「バッティングは昨日らへんから調子良かったんです」。そして続けた。「これからも、都大会で優勝できるように、チームを引っ張っていきたいです」

主力選手の欠場、1点を争う厳しい展開…。それでも、準決勝は劣勢から追いつきサヨナラ勝ちを収めると、決勝は3者凡退で抑えたイニングが一度もなく、守備時間が長い戦いとなったが、3回の1失点で踏みとどまり、1点のリードを守り切ってみせた。
攻撃中、三塁コーチャーズボックスからチームメートに声を掛け続けた伊藤主将は「今日は主力で来られない選手もいたので、いつもは強攻の場面で、バントのサインもよく出ていたし、ヒットエンドランもあって、いつもとは違う攻撃が続きました。でも、こうやって、最高にシビれる内容の試合を勝つことができた。こんな試合、そんなにない。すごい2試合でした」と、接戦を勝ち切り手にした優勝を喜んでいた。

この日の2試合を通じて、得たものは多かったはず。最終的に勝ち切り、優勝で戦いを終えたのだから、なおさらだろう。門田監督は「そうですね。ケガの功名とでもいうのか…。いつもとは違う選手起用で、新たに気づかされたことも多かったですね。これからの選手起用に迷ってしまうくらいの、選手たちの頑張りでした」とうなずいた。
失意の新人戦都決勝敗退を糧に、着実に進歩を続けるレッドサンズ。優勝チームに与えられるチャンピオンTシャツを全員が身につけ、夏に向かっての躍進を誓っていた。

―Team Inside Story❷―
“房総の盟主”夏に黄信号!? 手負いのライバルに苦杯、原点回帰へ
(取材&文=大久保克哉)
準優勝
とよがみ
豊上ジュニアーズ
[千葉・柏市]

真っ当な怒り
意のままといかぬストレスで当たり散らしたり、凡打やミスでいちいち激昂したり。そういう指導者はめっきり減ってきたが、根強く残ってもいる。
この決勝戦で相当に、がなり立てていた豊上ジュニアーズの指揮官は、そういう部類と踏んでいる向きも少なからずいることだろう。確かに、その声はいつも以上のトーンとボリュームで、時にヒステリックに聞こえなくもなかった。
しかし、言っていることはごく真っ当で、理不尽でもなかった。例えば、即戦力の期待と見極めの意味もあって、スタメンで起用されていた新5年生へ。
「そうやって、いちいちお父さんを見るな!!チームで野球をやっているんだよ!」「太陽が眩しいからフライが捕れませんでしたなんて、上のクラスじゃ通用しねぇぞ!!なんで最初からサングラスしてないんだよ!?」

新5年生コンビ。坂部怜哉㊤は打撃センスと走力を、荒井皇船㊦は外野の守備力と小技をそれぞれ披露

新6年生の主力組には、もっと手厳しかった。「初回のオマエのアレがなければ、2点(失点)はなかったし、1対0で勝っていた試合だろ!!」
敗戦後もやり玉に挙げられたのは、二塁手の玉井蒼祐だ。「アレ」とは、1回表の守り。一死一塁から相手が放った打球は、あっという間に右中間の特設フェンスに達する、鋭い球足のゴロだった。本来なら、打ったレッドサンズの二番・武内瑛汰を称えるべき二塁打である。
ただし、玉井は昨夏の全国大会2試合もスタメン出場していた二塁守備の名手だ。準決勝では6つの打球を捌いてすべてアウトに。この決勝でも無死二塁のピンチで、背後の小飛球をダイブで捕るスーパープレーがあった。

指揮官の厳しさは期待の裏返しでもある。玉井は再三の守備の好プレーに、決勝では唯一のタイムリ―㊦も

髙野範哉監督は、玉井の能力とキャパも熟知するだけに、初回の強烈なゴロ打球をスルーしたことに失望したのだろう。遊撃手の後山晴も前年からのレギュラーで、あわよくば4-6-3併殺。それは無理でも、1つのアウトは取ってほしかった。あるいは最悪でも、玉井ならば体で打球をストップすることはできたはず――。
試合後のミーティングが明けると、半べその玉井は辛うじて口を開いた。「監督が言うように、体で(打球を)止めることができなかったので…あれがなければ勝ってたと自分でも思うし、いろいろと注意されたことを、まずやっていきます…」
準決勝はベンチから懸命に声を発していた須藤結太は、決勝で途中出場㊤。背番号11の石井尊㊦は決勝でポテンシャルも示した

当たり前を当然に
試合では、やっていいミスと、やってはいけないミスがある――。これはキャリア20年になる髙野監督の“野球哲学”であり、指導育成の根本だ。三振や悪送球などの失敗は「仕方ない」=やってもいいミス。だが、アウトカウントを把握せずに二死からの飛球で走らないなど、当然の準備を怠ったり、漠然とプレーしていてのポカは「防げる」=やってはいけないミス。
新6年生たちは3年時の1年間、髙野監督から直々にそういう指導も受けている。結果、全国16強入りした現6年生たちを上回る勝率で推移してきた。昨秋の新人戦も千葉大会で優勝。続く関東大会の準決勝で山梨・ラウンダースに敗れたのが、新チームになっての初黒星だった。

最終日は三塁・左翼で好守を連発した増渕碧人㊤。蛭間悠智主将は最後の打席で鋭い当たりを飛ばした㊦

「関東大会で負けてから、何かズタズタときてますね。大会だらけのせいか、よしやるぞ!!という雰囲気ではなくて、サラッと試合に入っている。年明けにそのへんを注意してから、結構いい感じでやってたんですけど、このところ私は仕事で来れなくて。それで今日、2試合目(決勝)で見てみたら元に戻っている…」
指揮官が嘆くのも仕方なかった。相手打者のインパクトに合わせて、構えていなかった選手は即刻、ベンチへ下げられた。攻撃では二死二、三塁からの三ゴロで、目の前の三塁手にあっさりとタッチアウトにされた二走(※挟殺プレーに持ち込めば、三走生還で1点の可能性も)の選手は、ベンチでえらくどやされた。
いずれも「やってはいけないミス」。全国区の強豪チームにとっては、らしからぬ失態だ。後者はもしかすると、ルールの解釈が甘かったせいもあるかもしれないが、同じ状況が今後あった場合には、誰が走者であろうとも同じ轍を踏むことはないだろう。

関澤月陸㊤から玉井と後山㊦の二遊間、中堅の蒔田昊明まで、センターラインは実力派で固まっている

打線は準決勝では、クリーンヒットが後山の本塁打1本のみ。決勝は全6イニングで走者を二塁に置いたが、タイムリーは玉井の右前打1本のみ。それでも凡退した打者に対して、指揮官が声を荒げることはなかった。
「今年に入って、(現)6年生からバットを譲ってもらって使ってるんですけど、重くてまだ振れないのでスイングが鈍くなるのは承知の上。気持ちが入っていない面もありましたけどね」(髙野監督)
3年時からしのぎを削り合ってきたレッドサンズには、これで3連敗に。この決勝で対峙した好敵手は、病欠者が複数いてベストメンバーには遠かった。その相手に負かされたから、指揮官はカリカリしたのではない。少なくとも新6年生たちは、それも理解しているだろうし、当たり前を当たり前にやるという原点の確認からリスタートしていることだろう。
